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コラム「メンタルヘルス」

2012.01.17
仮面うつ病と仮性認知症(痴呆)
この二つの言葉に見覚えのある方は少ないと思います。うつ病は決して心の病で(精神症状)だけではなく、自律神経障害やホルモン失調などの身体症状を併発します。そのため身体症状を訴えて内科・婦人科・脳外科・整形外科・耳鼻科など多岐にわたる診療科を受診し精査を受けますが、異常なしとの診断結果を告げられ途方に暮れて、あちこちの診療科を訪ね歩き(ドクターショッピング)、実は「うつ病の身体症状」であることを気づかれずに「うつ」の治療が遅れてしまう事が起こるのです。結果としては「うつ」による自殺者の高止まりが続き、厚労省も日本医師会を促して、「うつ」を見落とさぬよう一般開業医の啓発活動を始めております。 すなわち、「うつ」でみられる身体症状の主なものは疲労感・睡眠障害(中途覚醒・早朝覚醒)・消化器障害(食欲不振・便秘・下痢)・性的障害(性欲減退・勃起障害)・頭痛(頭重)・肩こり・腰痛・動悸・発汗などですが、初診受診科で一番多いのはやはり内科(64.7%)で、最も多かったのは消化器疾患であったとの報告もあります(三木:2003)。 仮面うつ病とは抑うつ気分・何をするのも億劫・気重・自信喪失・とり越し苦労・悲観的となるなどの精神症状よりも上記のような身体症状を、より強く訴え続けるために精神症状である「うつ」が見落とされてしまうようなうつ病に対して用いられていました。筆者も腰痛に悩まされて整形外科を転々としておられた方が、実は「うつ病」の身体症状であって、抗うつ薬によって軽快した例を経験しております。 仮性認知症とは、これも実は「うつ病」の症状で、老年期うつ病にみられ、気分の落ち込み・気力の低下・記憶障害・食欲不振・不眠などから(実は認知症の前駆期的症状であることもありますが)、認知症が疑われてしまうこともあります。御承知のように認知症の治療は、現在なお確立されてはいませんが、これがうつ病であれば、うつ病の治療によって見違えるほど良くなるのです。ですから認知症と早合点せずに、うつ病を鑑別することが肝要となるわけです。

順天堂大学名誉教授
(財)順天堂精神医学研究所理事長
日本産業精神保健学会副理事長
井上令一
(財)順天堂精神医学研究所ホームページ
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